目次

[第一話]対照実験 [第二話]仏像 [第三話]楽園 [第四話]人身御供 [第五話]階層 [第六話]招き猫 [第七話]図書館 [第八話]怪獣 [第九話]箱 [第十話]落書 [第十一話]記憶 [第十二話]石板 [第十三話]発注書 [第十四話]樹木 [第十五…

[第五十九話]追放

神は空間を創造した。次に神は様々な物体を創造し、その空間の中に置いた。さらに神は、様々な種類の生物を創造し、空間の中にそれらを棲まわせた。神が創造した生物の種類の一つは、他の種類の生物とは比較にならないほど高い知能を持つものだった。その種…

[第五十八話]食材

タキロガという惑星では、様々な種の生物が繁栄している。それらの種のうちには、進化によって高い知能を獲得したものもあり、その種の生物は自身の種を人間と呼んでいる。人間たちは言語を発明し、音声によって意思の伝達を図った。さらに彼らは文字を発明…

[第五十七話]研究不正

ガラマクムは神だったが、彼はまだ宇宙を創造するという仕事に着手していなかった。あるとき彼は、その仕事に着手しなければならない時が来たと考えた。宇宙を創造するために、ガラマクムはまず、宇宙の物理法則を記述した数式を書いた。そして、その物理法…

[第五十六話]析出

メナデサという惑星には、多様な種の生物から構成される安定した生態系が構築されていた。しかし、この惑星の生態系は、人間と呼ばれる高度な知能を持つ生物の活動によって崩壊した。生態系の崩壊はメナデサの環境を著しく悪化させた。生物の多くの種が絶滅…

[第五十五話]通信機

モベナという惑星で発生した生物は、その進化の結果として、高度な知能を持つモベナ人と呼ばれる種を生み出した。モベナ人のすべての個体は旺盛な探究心を持つ。この性質は彼らが持つ科学技術を著しく進歩させた。彼らは、物体を超光速で移動させる技術、物…

[第五十四話]石棺

ミレナという惑星に生命が発生したのは、その惑星の誕生から七億年後のことである。ミレナに棲息する生物は、細胞と呼ばれる、自己増殖能力を持つ単位から構成される。個々の細胞は、遺伝子と呼ばれる糸状の分子を持つ。この分子には、遺伝情報と呼ばれる、…

[第五十三話]個体数

ガトマという惑星には、多種多様な植物が繁茂し、多種多様な動物が棲息していた。動物のうちで最も高い知能を持つ種の個体たちは、自身の種を「人間」と呼んだ。人間の棲息域はガトマの陸地の大部分を覆っていたが、彼らが持つ言語や慣習や宗教などの文化は…

[第五十二話]焦土

モルカという惑星の表面は、その面積の四分の三が海洋である。そして陸地は五つの大陸と無数の島々から構成されている。モルカには生物が棲息しており、その海洋にも陸地にも複雑な生態系が構築されている。生物の中には、進化の過程で高い知能を獲得した者…

[第五十一話]泉

マテナという女神が出現したとき、存在するものは彼女のみだった。彼女は宇宙を創造したいと思った。宇宙はマテナが自身のみによって創造することも可能だった。しかし彼女は、自身とは別の神の協力のもとにその仕事を進めたいと思った。そこで彼女は一柱の…

[第五十話]探査機

ミサクバという惑星の天文学者たちは、憲章暦二一三八年、七光年の距離にある恒星系に対する観測の結果、その恒星系の第四惑星がミサクバに極めて類似しているということを発見した。彼らはその惑星にトルケソナという名前を与えた。「トルケソナ」は、古代…

[第四十九話]風刺画

マキモラは、サデクナペタ大陸の中央に位置する王国である。マキモラの歴代の国王が都を置いたカボナという都市は、有史以前より、東西の交易の要衝として繁栄を謳歌してきた。マキモラ人の商人たちは、大陸の周縁部にある国々で特産品を買い集め、大陸の反…

[第四十八話]大量生産

ソブメナはきわめて美しい惑星である。そこには海があり、大陸があり、無数の島々があった。ソブメナには様々な種類の植物が繁茂し、様々な種類の動物が跋扈していた。動物たちのうちで最も知能の高い種類の者たちは、言語を操り、道具を作り、文化と文明を…

[第四十七話]台座

サグネブという神は、宇宙を創造し、そののち長い眠りに就いた。眠りから覚めたサグネブは、自身が創造した宇宙を検分した。その宇宙は数百億個の銀河から構成されており、個々の銀河は数千億個の恒星から構成されていた。恒星の多くは、それを中心として公…

[第四十六話]留学

セグタナという惑星に棲む人間たちは、誰もが、「神」と呼ばれる者たちに対する畏敬の念を忘れてはならないと幼少時から教え込まれていた。セグタナ人たちは、セグタナの大気圏を飛行する物体をしばしば目撃した。多くの場合、それは円盤状の白色の物体であ…

[第四十五話]水

キヌカという惑星は、その表面の大半を「海」と呼ばれるものに覆われていた。海とは、「水」と呼ばれる物質が液体の状態で集積したもののことである。惑星の表面のうちで、海に覆われることなく個体の物質が露出している部分は、「陸」と呼ばれる。キヌカに…

[第四十四話]分岐

虚空の中に神々が出現したとき、宇宙はまだ存在していなかった。出現した神々の数は七柱だった。彼らは会議を開き、これから自分たちは何をすべきであるかという問題について話し合った。そして、宇宙を創造すべきであると満場一致で議決した。彼らは、多次…

[第四十三話]受刑者

ガモネスという神は二つの世界を創造した。彼はその一方を「現世」と名付け、他方を「来世」と名付けた。現世は、人間の肉体が有限の寿命を持つ世界である。人間は、そこで誕生し、成長し、そして死亡する。現世においては、法を定める者も民を統べる者も裁…

[第四十二話]円筒

タゲマという惑星の環境は悪化の一途をたどっていた。その惑星に棲む神という種類の生物は、環境の悪化を食い止めることは不可能であると判断した。そこで彼らは、新たな天体を創造し、そこへ移住する計画を立てた。彼らが創造した天体は、内部が空洞になっ…

[第四十一話]軍事裁判

ラゼムという神は宇宙の究極的な創造者である。すなわち、宇宙に存在するあらゆる事物は、その創造の連鎖を遡ると、必ず彼に到達するのである。ラナスタという惑星の表面にはバルテクマという大陸があり、そこには人間が住んでいる。その大陸の周囲には様々…

[第四十話]軸

バルモニスという惑星で発生した人類は、高度な科学を発達させた。彼らは時速一万光年を超える速度で航行する宇宙船を駆使して周辺の銀河を次々と植民地化していった。それらの銀河に棲むあらゆる生命体は彼らの支配下に置かれた。開拓暦三六四一年にバルモ…

[第三十九話]廃棄

ギメタジカという惑星に住む人類は様々な宗教を信仰していた。スミナム教という宗教もそのうちの一つだった。スミナム教は、回帰暦二世紀にスミナムという人物によって創始された宗教である。彼は自らを神の子と称し、数々の奇蹟を人々に示した。そして彼の…

[第三十八話]申請

トメナマという国では、古来より、神々が存在するということを大多数の人々が信じていた。有史以前の時代から、トメナマの各地には神々を祀る神殿が鎮座していた。信仰を持つ人々は足繁く神殿に参拝し、親しい人々や自身の幸福を神々に祈願した。一部の人々…

[第三十七話]斬首

マチモリカという国では、魔女と呼ばれる女性たちが、社会にとって必要不可欠の存在とみなされていた。魔女とは、魔法と呼ばれる超自然的な技術を駆使することによって人々の様々な問題を解決するという職業に従事する女性のことである。魔法は、通常の手段…

[第三十六話]拒絶反応

その宇宙には無数の惑星が存在していた。それらの惑星の大多数は生物が存在しない死の世界だったが、生物が発生した惑星も少なからず存在した。生物が発生した惑星の多くにおいて、生物は進化し、知性を持つ生物、すなわち人間を生み出すに至った。人間たち…

[第三十五話]改憲

メキゴタという国の憲法は、信教の自由と政教分離を定めた条項を持っていた。その国の人々が信仰している宗教には様々なものがあったが、それらのうちで、信者数が国の人口の一割を超えるものは一つとして存在しなかった。トケリマというメキゴタの地方都市…

[第三十四話]数学者

神が最初にネビラ山に降臨したのは、瑞星暦二八一年のことだった。ネビラ山の麓にある村の人々は、見知らぬ男が山から下って来るのを見た。名前を尋ねると、その男はメルテスと名乗った。その名前は、数百年前に滅亡した帝国の言語で「数式を書く者」を意味…

[第三十三話]宝剣

グメタルス島は、ムゼカ大陸から東に三千里離れた洋上に位置する孤島である。この島の存在は、カロデクスという探検家によって発見されるまで、文明国に住む人々の誰一人として知る者がいなかった。探検に必要な船と船員をカロデクスに提供したのは、サクミ…

[第三十二話]裏書

ミザム教の教皇庁は、『コトコギム』という文書をミザム教の正典として公認していた。『コトコギム』は、ミザムという預言者によって再興暦三世紀に書かれた。そこに記されているのは、モクタルスという神がミザムに与えた啓示である。『コトコギム』によれ…

[第三十一話]奉仕

ケゴタミスは自動人形の父と呼ばれる。彼は生涯のうちに三百を超す発明をしたと伝えられているが、自動人形は、彼が発明した様々なものの中で最も重要な功績とされている。ケゴタミスが自動人形の試作機を人々に公開したのは統合暦四五二年のことだった。そ…