[第二話]仏像

ある年、日照りが何十日も続いた。このまま雨が降らなければ飢饉となることは確実だった。ケルムサスは丈六の仏像を造り、その仏像に降雨を祈願した。仏像はその願いを聞き届け、大地に雨をもたらした。

次の年、疫病が猛威をふるった。人々はケルムサスが造った仏像に疫病の終息を祈願した。しかし、その仏像の法力では、その願いをかなえることができなかった。そこで仏像は、身長十六丈の第二の仏像を造り、その仏像に疫病の終息を祈願した。第二の仏像は疫病を終息させた。

十年が過ぎた。その年、豪雨が何十日も続いた。大地の大部分は水に覆われ、人々は高い山の上へ避難した。彼らは、一刻も早く雨が上がるようにと第二の仏像に祈願した。しかし、その仏像の法力では、その願いをかなえることができなかった。そこで仏像は、身長百六十丈の第三の仏像を造り、その仏像に雨が上がることを祈願した。第三の仏像は雨雲を退散させた。

百年が過ぎた。その年、太陽が膨張を開始した。太陽は地球を呑み込もうとしていた。人々は、太陽がもとの大きさに戻ることを第三の仏像に祈願した。しかし、その仏像の法力では、その願いをかなえることができなかった。そこで仏像は、身長千六百丈の第四の仏像を造り、その仏像に太陽の収縮を祈願した。しかし、第四の仏像の法力でも太陽を収縮させることはできなかった。そこで第四の仏像は、自身の胎内にすべての生物を収容し、太陽から逃れ、別の惑星で胎内から生物を出した。その惑星は第二の地球となった。

千年が過ぎた。その年、宇宙が消滅を開始した。人々は、宇宙の存続を第四の仏像に祈願した。しかし、その仏像の法力では、その願いをかなえることができなかった。そこで仏像は、身長一万六千丈の第五の仏像を造り、その仏像に宇宙の存続を祈願した。しかし、第五の仏像の法力でも宇宙を存続させることはできなかった。そこで第五の仏像は、自身の胎内に第二の宇宙を創造した。そして、すべての生物を胎内に収容した第四の仏像を第二の宇宙へ送り込んだ。第五の仏像は第一の宇宙とともに消滅したが、第二の宇宙はそののちも存在し続けた。

第四の仏像は、生物の棲息に適した惑星を探した。そして発見した惑星に降り立ち、胎内から生物を出した。その惑星は第三の地球となった。