[第五話]階層

クトゥブスは宇宙を創造した。宇宙は膨張し、さまざまな天体が生まれ、惑星には生物が発生し、生物は進化した。

宇宙を創造したのち、クトゥブスは眠りに就き、そして夢を見た。その夢の中で、彼は、自分が創造した宇宙の中にある惑星で暮らしている、ラサイドという名前の人間だった。

ある日の夜、眠りに就いたラサイドは夢を見た。夢の中で、彼はクトゥブスという名前の神だった。彼とその仲間の神々は、酒宴に興じ、詩を吟じ、楽器を奏し、そして宇宙を創造した。彼らが創造したそれぞれの宇宙は、膨張し、その中にはさまざまな天体が生まれ、惑星には生物が発生し、生物は進化した。

宇宙を創造したのち、クトゥブスは眠りに就き、そして夢を見た。その夢の中で、彼は、自分が創造した宇宙の中にある惑星で暮らしている、ラサイドという名前の人間だった。

ラサイドは、自分が、クトゥブスという神が見ている夢の中の人間だということに気付いた。そして、このままでは夢の階層が深くなっていくばかりで現実の世界には戻ることができないと考えた。そこで彼は、自分の命を絶つことにした。なぜなら、自分が死ねば、自分の夢を見ているクトゥブスは目を覚ますに違いないと考えたからである。

ラサイドは、木の枝に紐を結んで首を吊った。彼が絶命すると同時に、彼の夢を見ていたクトゥブスは目を覚ました。

クトゥブスは起き上がって周囲を見回した。そして、自分がまだ、自分が創造した宇宙の中にいることを知った。彼の目の前では、木の枝に吊されたラサイドの死体が揺れていた。

自分は神なのか人間なのかという疑問がクトゥブスの思考を支配した。彼は、宇宙を創造することが自分にできるかどうかを試してみれば、その疑問に解答を出すことができると考えた。そして彼は宇宙の創造に着手した。

宇宙の創造は可能だった。クトゥブスは、自分が創造した宇宙の中にさまざまな天体が生まれるのを見た。しかし彼は、惑星の上で起こっている事態を見て驚愕した。そこでは、生物ではなく神々が発生していたのである。それらの神々は、酒宴に興じ、詩を吟じ、楽器を奏し、そして宇宙を創造した。

神々が創造したそれぞれの宇宙は、膨張し、その中にはさまざまな天体が生まれた。そして、どの宇宙についても、惑星の上で発生したのは生物ではなく神々だった。それらの神々は宇宙を創造した。宇宙の階層はしだいに深くなり、宇宙の数は爆発的に増大し続けた。

クトゥブスは、この事態に終止符を打つためには、自分を夢で見ている者を眠りから覚まさなければならないと考えた。そこで彼は、木の枝に紐を結んで首を吊った。彼が絶命すると同時に、彼の夢を見ていた者は目を覚ました。

目を覚ましたのはラサイドだった。彼は、目覚めた直後はまだ夢の内容を断片的に記憶していた。しかし、その記憶は時とともに薄れていった。