[第八話]怪獣

テシクトルという都市には道徳的な腐敗が蔓延していた。

天界の神々はテシクトルに対する処置をめぐって鳩首し、破却以外の選択肢はないと衆議一決した。彼らは、テシクトルを廃墟に帰せしめるため、一匹の巨大な怪獣を創造し、ミラセノスという名をそれに与えた。

天界からテシクトルへ送り込まれたミラセノスは、建物を粉砕し、逃げ惑う人々を踏み潰した。テシクトルの防衛隊は重火器で怪獣を攻撃した。しかし、怪獣の表皮は鋼鉄よりも硬く、傷一つそれに与えることはできなかった。

テシクトルの首脳たちは地下に造られた避難所に集まり、対策を協議した。彼らは、ミラセノスを退治する手段について研究する機関を設立することを決定した。

研究機関に徴用された人々は、ミラセノスの一挙一動を観察し続けた。その結果、天界から投下される円盤状の物体が怪獣の食料であることが判明した。そこで、防衛隊は、投下される食料に似せた爆弾を作り、怪獣が進行しつつある線上にそれを置いた。怪獣は爆弾を拾い上げ、それを口に運んだ。爆弾は爆発し、怪獣を死に至らしめた。

神々は第二の怪獣を創造し、リメサソルという名をそれに与えた。ミラセノスの失敗を踏まえ、リメサソルには、人間たちの策略を見抜くことができるだけの知能が与えられた。

天界からテシクトルへ送り込まれたリメサソルは、瓦礫と死体の山を築きながら前進した。その怪獣に対しては、重火器ばかりではなく、食料に似せた爆弾もまた役に立たなかった。

研究機関の人々は、第二の怪獣を観察し続けた。その結果、その怪獣が人間の言語を理解する能力を持っていることが判明した。そこで、研究機関の代表者は、防衛隊とともに怪獣の前方に立ち、なぜこの都市を破壊するのかと怪獣に尋ねた。

リメサソルは答えた。「この都市には道徳的な腐敗が蔓延している。それゆえ神々は、この都市を滅ぼすことを決め、そのための手段として私を創造したのだ」

代表者は弁明した。「道徳的に腐敗した人々が存在することは事実だが、それは一部分に過ぎない。罪のない人々まで犠牲にするのは道義に反するのではないか」

怪獣はその弁明を聞き、この都市を破壊することがいかに理不尽であるかを理解した。そして怪獣はテシクトルから去っていった。

神々は第三の怪獣を創造し、キネミヌムという名をそれに与えた。リメサソルの失敗を踏まえ、神々はキネミヌムに知能を与えなかった。その怪獣は、神々によって操作されなければ、いかなる動作を実行することもできなかった。

神々はキネミヌムを天界からテシクトルへ送り込もうとしたが、その計画を阻止しようとする者が出現した。天界に戻って来たリメサソルが、キネミヌムの前に立ちはだかったのである。

神々はキネミヌムを操作し、リメサソルに攻撃を加えた。しかし、その攻撃はリメサソルに対していかなる痛痒も与えなかった。リメサソルは反撃に転じ、神々が操る怪獣に致命傷を負わせた。

リメサソルは神々に向かって、不道徳な者どもを罰するのはかまわないが、道徳的に健全な人々は生かしておくべきであると説いた。しかし神々は怪獣の言葉に耳を貸そうとはせず、怪獣を天界から追い払うことに血眼になった。やむを得ず、リメサソルは天宮をことごとく粉砕し、逃げ惑う神々を地上へ投げ落とした。

リメサソルは、テシクトルの住民のうちで道徳的に健全な人々のみを天界に引き上げた。彼らは天宮を再建してそれらを住処とした。それに加えて彼らは、並外れて巨大な一棟の天宮を建設し、それをリメサソルに献上した。