[第二十話]襲名

自分は存在しているとテモタが気づいたとき、存在しているものは彼女のほかに何もなかった。

テモタは自分とは異なるさまざまなものを造ろうと考えた。そこで彼女は、月曜日に宇宙を造り、火曜日に無数の恒星を造り、水曜日に無数の惑星を造り、木曜日に無数の惑星の中から一つを選び、その惑星の水中に適応したさまざまな生物を造り、金曜日にその惑星の地上に適応したさまざまな生物を造り、土曜日に自分に似せた生物を造り、生物が棲む惑星を彼らに管理させ、そして日曜日に休息をとった。

テモタは自分に似せて造った生物を人間と呼んだ。彼女は人間たちに戒律を授けようと考えた。そこで彼女はデムセスという人間を預言者として選んだ。

テモタはデムセスに啓示を下した。「我が名はテモタ。この宇宙を所有する者。我、汝ら人間に戒律を授く。土曜日は一切の食物を断ち、感謝の祈りを我に捧げよ。デムセスよ、汝はこの戒律をすべての人間に伝えよ」

デムセスはテモタから授かった戒律をすべての人間に伝えた。すべての人間はその戒律を守り、土曜日は一切の食物を断ち、テモタに感謝の祈りを捧げた。

テモタは自分の子供を造ろうと考えた。彼女は自分の体内から取り出した肋骨の一本を材料にして自分の夫を造り、夫と交わって女の赤児を産んだ。母親はその娘にトミネカという名前を与えた。

六百年後、テモタは永遠の眠りに就いた。トミネカはテモタという名前を襲名し、宇宙を相続した。

二代目のテモタは初代のテモタが定めた戒律を改定しようと考えた。そこで彼女はセラゴルという人間を預言者として選んだ。

テモタはセラゴルに啓示を下した。「我が名はテモタ。この宇宙を所有する者。我、汝ら人間に授けられし戒律を改定す。日曜日は一切の食物を断ち、感謝の祈りを我に捧げよ。セラゴルよ、汝はこの改定をすべての人間に伝えよ」

セラゴルはテモタから授かった戒律をすべての人間に伝えた。三割の人間はその改定を受け入れ、断食の日を土曜日から日曜日へ移した。しかし七割の人間はセラゴルを預言者として認めず、土曜日の断食に固執した。

人間たちの立法機関である議会は、土曜日に食事をした者を死刑にする法案を可決した。セラゴルは、土曜日に食事をする自由を獲得するために、自分を預言者として認める人々を率いて未開の大陸へ渡り、そこに国家を建設した。

未開の大陸へ渡った人々はセラゴルが建設した国をセラゴリアと呼んだ。それに対して、デムセスのみを預言者として認める人々は自分たちの国をデムセシアと呼んだ。

二代目のテモタは自分の体内から取り出した肋骨の一本を材料にして自分の夫を造り、夫と交わって女の赤児を産んだ。母親はその娘にセレキナという名前を与えた。

二代目のテモタがセラゴルに啓示を下してから五百九十七年が過ぎた。彼女はデムセシアのすべての国民が依然として日曜日に食事をしていることに憤りを覚えた。そこで彼女はセラゴリアに住むマキテブという人間を預言者として選んだ。

テモタはマキテブに啓示を下した。「我が名はテモタ。この宇宙を所有する者。我、汝らセラゴリアの国民に命ず。デムセシアを征服し、汝ら人間に授けられし戒律を遵守せしめよ。マキテブよ、汝はこの命令をセラゴリアのすべての国民に伝えよ」

マキテブはテモタから授かった命令をセラゴリアのすべての国民に伝えた。一割の国民はその命令に従い、マキテブを将軍とする義勇軍を編制してデムセシアに進撃した。しかし九割の国民はマキテブを預言者として認めず、命令を無視した。

デムセシアは防衛軍を編制してセラゴリアの義勇軍を迎撃した。防衛軍の兵力は義勇軍の五倍に達していた。しかし義勇軍の士気はテモタの命令を遂行するという使命感によって大いに高められていた。義勇軍は勇猛果敢に闘い、要塞や都市を一つ一つ攻略していった。

防衛軍と義勇軍との闘いはデムセシアの首都の陥落とともに幕を閉じた。マキテブは自らを皇帝と称し、国号をマキテビアに変更し、議会を解散させ、日曜日に食事をした者を死刑にする法律を施行した。

マキテビアのすべての国民は断食の日を土曜日から日曜日へ移した。しかし彼らは、正しい断食の日は土曜日であり、日曜日の断食は強制によるものであるという認識を持ち続けた。

三年後、二代目のテモタは永遠の眠りに就いた。セレキナはテモタという名前を襲名し、宇宙を相続した。

三代目のテモタはセラゴリアに住むギミケムという人間を預言者として選び、彼に啓示を下した。「我が名はテモタ。この宇宙を所有する者。我、汝ら人間に授けられし戒律を改定す。土曜日は一切の食物を断ち、感謝の祈りを我に捧げよ。ギミケムよ、汝はこの改定をすべての人間に伝えよ」

ギミケムはテモタから授かった戒律をすべての人間に伝えた。セラゴリアの国民のうちでギミケムを預言者として認める者はきわめて少数だった。しかしマキテビアの皇帝であるマキテブは彼を預言者として認め、断食の日に食事をした者を死刑にする法律を改定し、日曜日を土曜日に置き換えた。マキテビアの国民はその改定に歓喜した。

三代目のテモタは自分の体内から取り出した肋骨の一本を材料にして自分の夫を造り、夫と交わって女の赤児を産んだ。母親はその娘にミコルマという名前を与えた。

六百年後、三代目のテモタは永遠の眠りに就いた。ミコルマはテモタという名前を襲名し、宇宙を相続し、預言者に啓示を下した。四代目のテモタが選んだ預言者の名前、そして彼に下された啓示は、人間たちのいかなる書物にも記載されていない。その理由は、彼を預言者として認める人間が皆無だったからである。